2010 年 9 月 6 日
Posted by 田村圭介 /昭和女子大学環境デザイン学科准教授
これから渋谷駅のうつりかわりについて5回使って書きます。今回は渋谷駅の特徴について、残りの4回では渋谷駅の発生から始まり、2050年まで描かれているシナリオについて書こうと思います。日本の近代化とともに現在まで125年歩んできた渋谷駅は、どのように変化してきたのでしょうか。
1.渋谷駅とは何か。
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渋谷駅で迷われた体験はどの方もお持ちでしょう。いつも問題なく利用している駅なのに、迷ったときには突然渋谷駅が巨大な立体迷路に見えたのではないでしょうか。「分かりにくい。」「ゴミゴミしている。」「不便である。」など、渋谷駅に見られるイメージはあまりよくありません。
渋谷駅の一日乗降者数は、約240万人(新宿駅、池袋駅に次いで3番目)です。フランスのパリの人口が約220万人、愛知県名古屋市の人口が約230万人なので、その多さは分かると思います。東京都の人口が約1250万人なので、東京都人口の約五分の一に値する乗降者数が渋谷駅を毎日利用しているのです。
渋谷駅には9本の鉄道路線が乗り入れしています。それらは、山手線、埼京線、湘南新宿ライン、東横線、田園都市線、銀座線、半蔵門線、副都心線、井の頭線です。9鉄道路線あるということは、全部で72通り(9路線×8路線×2通り)の電車の乗り換え方法があるということになります。実際には、相互直通や同じプラットフォームの使用などがあるので72ルートも駅内に確保されていませんが、渋谷駅はその乗り換えが可能なようにできています。
また、渋谷駅を複雑にしている理由のもう一つにその空間構成があります。同じ巨大ターミナル駅でも新宿駅、池袋駅はホームが平行に並んでいるため、空間の把握が比較的容易ですが、渋谷駅の場合はホームが交差していて、それが立体的に絡み合っています。つまり、ホームの配置がイレギュラーで、連絡通路や階段が多いのです。
以上の3点、240万人の一日乗降者数、9鉄道路線の乗り入れ、交差型立体的空間構成を見れば、渋谷駅が混雑して不便であると思われても無理もありません。それでは、この渋谷駅はどのようにできたのでしょうか。突然240万人が利用できる駅ができたわけではありません。時代時代の要請に応じて改良工事を繰り返し、駅を更新してきた結果が現在のハリボテのような渋谷駅の姿です。
残りの4回ではこの渋谷駅の更新履歴をその発生から追っていきます。
在りし日の渋谷東急文化会館の裏から渋谷駅を望む |
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